慶應義塾大学
2012年 商学部 第3問
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企業$X$と企業$Y$が,互いに競合する商品を販売しようとしている.両社は,販売する商品の特性を,ある程度の範囲の中から選ぶことが可能である.また,消費者の好みもさまざまである.この状況での企業の戦略決定を,次のモデルで考えてみよう.
企業$X$が販売する商品の特性を$x$,企業$Y$が販売する商品の特性を$y$,消費者の好みを$t$で表す.ただし,それぞれのとり得る値の範囲は, \[ 0 \leqq x \leqq 1,\quad 0 \leqq y \leqq 1,\quad 0 \leqq t \leqq 1 \] とする.企業$X$と$Y$は,まず,特性$x$と$y$をそれぞれ決めるものとする.その結果は公表され,各企業は,相手の企業が決めた特性も知るものとする.以下,$x<y$の場合に限定して考察する.第$2$段階として,企業$X$は販売する商品の$1$個あたりの販売価格$p$(円)を決め,同様に企業$Y$は$q$(円)を決める.ただし,販売価格のとり得る値の範囲は,$p>0$,$q>0$とする.一方,好み$t$を持つ消費者は,自分の好みと商品の特性および販売価格を考え合わせて,次のように商品を選択して購入するものとする.この消費者にとっての企業$X$の商品の価値$V_X$と企業$Y$の商品の価値$V_Y$が,$U$と$c$を正の定数として, \[ V_X=U-p-c(t-x)^2,\quad V_Y=U-q-c(t-y)^2 \] で定まるものとし,消費者は,自分にとっての価値が大きい方の商品を選択するものとする.問題の複雑化を避けるため,もし価値が等しければ,企業$X$の商品を選択するものとする.また,いずれの場合でも,消費者は,選択した商品を必ず購入するものとする.
以下の設問において,太線の四角による表示のある問い,例えば$\fbox{$(52)$}$や$\fbox{$(53)$}$など,に対しては$x,\ y,\ p,\ q,\ c$のいずれかの文字が入る.$x$を入れる場合は$1$,$y$ならば$2$,$p$ならば$3$,$q$ならば$4$,$c$ならば$5$と解答しなさい.
(1) 消費者の選択に関する仮定から実数$\overline{t}$が定まり,好み$t$を持つ消費者は,$t \leqq \overline{t}$であれば企業$X$の商品を選び,$t>\overline{t}$であれば企業$Y$の商品を選ぶことがわかる.$\overline{t}$の値を$x,\ y,\ p,\ q,\ c$を用いて表すと, \[ \frac{\fbox{$(52)$}+\fbox{$(53)$}}{\fbox{$(54)$}}+\frac{1}{\fbox{$(55)$} \fbox{$(56)$}} \cdot \frac{\fbox{$(57)$}-\fbox{$(58)$}}{\fbox{$(59)$}-\fbox{$(60)$}} \] となる.
(2) 次に,企業の売上高に相当する値を定める.はじめに記したように,消費者の好みはさまざまであり,その好みが$0$と$1$の間に分布していると考えている.その分布の仕方を特定すれば,各消費者の選択を集約することにより,各企業の売上高を定めることができる.ここでは,企業$X$の売上高に相当する評価値$T_X$と,企業$Y$の売上高に相当する評価値$T_Y$を, \[ T_X=p \overline{t},\quad T_Y=q(1-\overline{t}) \] と定め,これらの評価値を最大化する問題に置き換えて考える(ただし,$\overline{t}$は$(1)$で求めたものである).もう少し詳しく記すと,第$2$段階における,$x<y$であることを前提とした価格設定がどのようになるかをまず調べ,その決定の仕方を考慮に入れて,評価値が最大になる商品の特性を求める,という問題をいくつかのステップに分けて考える.
まず,$T_X$を$p$の関数と考える.ここで,$T_X$を$p$の関数と考えるということは,$T_X$の式の中に含まれる$p$以外の文字,すなわち$x,\ y,\ q,\ c$はすべて定数と考える,ということである.この点に注意して,$T_X$が最大値をとる$p$の値を$x,\ y,\ q,\ c$を用いて表すと, \[ \frac{\fbox{$61$}}{\fbox{$62$}}+\frac{\fbox{$63$}(\fbox{$64$}+\fbox{$65$})(\fbox{$66$}-\fbox{$67$})}{\fbox{$68$}} \] となる.
(3) 同様にして,$T_Y$を$q$の関数と考え,$T_Y$が最大値をとる$q$の値を$x,\ y,\ p,\ c$を用いて表すことができる.$(2)$の結果と合わせると,$p$と$q$についての連立$1$次方程式が得られる.この連立方程式の解を$\overline{p}$と$\overline{q}$とすると,$p=\overline{p}$,$q=\overline{q}$において,$T_X$は$p$の関数として最大値をとり,同時に,$T_Y$は$q$の関数として最大値をとることがわかる.$\overline{p}$の値を$x,\ y,\ c$を用いて表すと, \[ \frac{\fbox{$69$}}{\fbox{$70$}} (\fbox{$71$}-\fbox{$72$})(\fbox{$73$}+\fbox{$74$}+\fbox{$75$}) \] となり,$\overline{p}$と$\overline{q}$に対する$\overline{t}$の値は, \[ \frac{\fbox{$76$}}{\fbox{$77$}}+\frac{\fbox{$78$}+\fbox{$79$}}{\fbox{$80$}} \] と表される.
(4) 最後に,各企業の価格決定が今求めた$\overline{p}$と$\overline{q}$になることを前提として,企業$X$は商品の特性$x$を以下のように決定する.まず,$p=\overline{p}$,$q=\overline{q}$として,$T_X$を$x$の関数と考える.次に,この関数$T_X=f(x)$が最大値をとる$x$の値を求める.その値を$\overline{x}$とする.ここで,関数$T_X=f(x)$のグラフの概形を座標平面に描きなさい.ただし,関数の極値および極値をとる$x$の値を明記する必要はありません.
(5) 企業$Y$もまったく同様にして,$p=\overline{p}$,$q=\overline{q}$とし,$T_Y$を$y$の関数と考えて,その関数が最大値をとる$y$の値を求める.その値を$\overline{y}$とする.$\overline{x}$と$\overline{y}$が決まれば,それらに対する$\overline{p}$と$\overline{q}$も確定する.これらの値の組は与えられた仮定を満たし,企業$X$と$Y$にとって,お互いに最適な戦略決定になっている.最終的に求められた$\overline{x}$,$\overline{y}$,$\overline{p}$,$\overline{q}$,$\overline{t}$それぞれの値を$c$を用いて表せ.
企業$X$が販売する商品の特性を$x$,企業$Y$が販売する商品の特性を$y$,消費者の好みを$t$で表す.ただし,それぞれのとり得る値の範囲は, \[ 0 \leqq x \leqq 1,\quad 0 \leqq y \leqq 1,\quad 0 \leqq t \leqq 1 \] とする.企業$X$と$Y$は,まず,特性$x$と$y$をそれぞれ決めるものとする.その結果は公表され,各企業は,相手の企業が決めた特性も知るものとする.以下,$x<y$の場合に限定して考察する.第$2$段階として,企業$X$は販売する商品の$1$個あたりの販売価格$p$(円)を決め,同様に企業$Y$は$q$(円)を決める.ただし,販売価格のとり得る値の範囲は,$p>0$,$q>0$とする.一方,好み$t$を持つ消費者は,自分の好みと商品の特性および販売価格を考え合わせて,次のように商品を選択して購入するものとする.この消費者にとっての企業$X$の商品の価値$V_X$と企業$Y$の商品の価値$V_Y$が,$U$と$c$を正の定数として, \[ V_X=U-p-c(t-x)^2,\quad V_Y=U-q-c(t-y)^2 \] で定まるものとし,消費者は,自分にとっての価値が大きい方の商品を選択するものとする.問題の複雑化を避けるため,もし価値が等しければ,企業$X$の商品を選択するものとする.また,いずれの場合でも,消費者は,選択した商品を必ず購入するものとする.
以下の設問において,太線の四角による表示のある問い,例えば$\fbox{$(52)$}$や$\fbox{$(53)$}$など,に対しては$x,\ y,\ p,\ q,\ c$のいずれかの文字が入る.$x$を入れる場合は$1$,$y$ならば$2$,$p$ならば$3$,$q$ならば$4$,$c$ならば$5$と解答しなさい.
(1) 消費者の選択に関する仮定から実数$\overline{t}$が定まり,好み$t$を持つ消費者は,$t \leqq \overline{t}$であれば企業$X$の商品を選び,$t>\overline{t}$であれば企業$Y$の商品を選ぶことがわかる.$\overline{t}$の値を$x,\ y,\ p,\ q,\ c$を用いて表すと, \[ \frac{\fbox{$(52)$}+\fbox{$(53)$}}{\fbox{$(54)$}}+\frac{1}{\fbox{$(55)$} \fbox{$(56)$}} \cdot \frac{\fbox{$(57)$}-\fbox{$(58)$}}{\fbox{$(59)$}-\fbox{$(60)$}} \] となる.
(2) 次に,企業の売上高に相当する値を定める.はじめに記したように,消費者の好みはさまざまであり,その好みが$0$と$1$の間に分布していると考えている.その分布の仕方を特定すれば,各消費者の選択を集約することにより,各企業の売上高を定めることができる.ここでは,企業$X$の売上高に相当する評価値$T_X$と,企業$Y$の売上高に相当する評価値$T_Y$を, \[ T_X=p \overline{t},\quad T_Y=q(1-\overline{t}) \] と定め,これらの評価値を最大化する問題に置き換えて考える(ただし,$\overline{t}$は$(1)$で求めたものである).もう少し詳しく記すと,第$2$段階における,$x<y$であることを前提とした価格設定がどのようになるかをまず調べ,その決定の仕方を考慮に入れて,評価値が最大になる商品の特性を求める,という問題をいくつかのステップに分けて考える.
まず,$T_X$を$p$の関数と考える.ここで,$T_X$を$p$の関数と考えるということは,$T_X$の式の中に含まれる$p$以外の文字,すなわち$x,\ y,\ q,\ c$はすべて定数と考える,ということである.この点に注意して,$T_X$が最大値をとる$p$の値を$x,\ y,\ q,\ c$を用いて表すと, \[ \frac{\fbox{$61$}}{\fbox{$62$}}+\frac{\fbox{$63$}(\fbox{$64$}+\fbox{$65$})(\fbox{$66$}-\fbox{$67$})}{\fbox{$68$}} \] となる.
(3) 同様にして,$T_Y$を$q$の関数と考え,$T_Y$が最大値をとる$q$の値を$x,\ y,\ p,\ c$を用いて表すことができる.$(2)$の結果と合わせると,$p$と$q$についての連立$1$次方程式が得られる.この連立方程式の解を$\overline{p}$と$\overline{q}$とすると,$p=\overline{p}$,$q=\overline{q}$において,$T_X$は$p$の関数として最大値をとり,同時に,$T_Y$は$q$の関数として最大値をとることがわかる.$\overline{p}$の値を$x,\ y,\ c$を用いて表すと, \[ \frac{\fbox{$69$}}{\fbox{$70$}} (\fbox{$71$}-\fbox{$72$})(\fbox{$73$}+\fbox{$74$}+\fbox{$75$}) \] となり,$\overline{p}$と$\overline{q}$に対する$\overline{t}$の値は, \[ \frac{\fbox{$76$}}{\fbox{$77$}}+\frac{\fbox{$78$}+\fbox{$79$}}{\fbox{$80$}} \] と表される.
(4) 最後に,各企業の価格決定が今求めた$\overline{p}$と$\overline{q}$になることを前提として,企業$X$は商品の特性$x$を以下のように決定する.まず,$p=\overline{p}$,$q=\overline{q}$として,$T_X$を$x$の関数と考える.次に,この関数$T_X=f(x)$が最大値をとる$x$の値を求める.その値を$\overline{x}$とする.ここで,関数$T_X=f(x)$のグラフの概形を座標平面に描きなさい.ただし,関数の極値および極値をとる$x$の値を明記する必要はありません.
(5) 企業$Y$もまったく同様にして,$p=\overline{p}$,$q=\overline{q}$とし,$T_Y$を$y$の関数と考えて,その関数が最大値をとる$y$の値を求める.その値を$\overline{y}$とする.$\overline{x}$と$\overline{y}$が決まれば,それらに対する$\overline{p}$と$\overline{q}$も確定する.これらの値の組は与えられた仮定を満たし,企業$X$と$Y$にとって,お互いに最適な戦略決定になっている.最終的に求められた$\overline{x}$,$\overline{y}$,$\overline{p}$,$\overline{q}$,$\overline{t}$それぞれの値を$c$を用いて表せ.
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